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街の価値を事業承継する選択

福田屋のクリームモナカ


概要

長年、地元の人々に愛されてきた老舗甘味処「福田屋」。惜しまれつつ閉店する名店の代表的な商品であるクリームモナカのレシピと製造機器を受け継ぎ、街が引き継いでいくものとして、価値をつくり育てていく。マイクロディベロップメントの象徴的な事例。

福田屋

背景

街の価値を体現しているお店や場所が、ある日突然なくなる。どの街でも起こり得る状況に、自分たちができることとはいったい何かを考え続けて来た。そうしたタイミングで、長い間地元の人々に愛されてきた老舗甘味処「福田屋」が突然閉店した時、この街の価値が減少したような気がした。既存の店舗そのものを引き継ぐことは難しいが、代表的なメニューにし限定すれば何とか残せるかもしれないと考えた。

多くの地元の人たちがこの場所とともに時間を重ねてきた
閉店後のシャッターに貼られた、今までの感謝を伝えるメッセージ

アイデア

「この街になんとか福田屋の味を残したい」。その想いで福田屋のご主人のもとに直談判に行った。「福田屋の名前を残してもらえることがありがたい」という言葉とともに、代表的な商品「福田屋のクリームモナカ」を受け継がせていただくことになり、秘伝のレシピとアイス製造機器を譲り受け、製造方法を指導いただいた。アイス製造機械は相当なリペアが必要で、かつ製造メーカーも既に廃業していたが、ものづくりが盛んな蒲田ならではの町工場のネットワークにより機器の復活が実現した。

地元の町工場によってリペアされたアイス製造機器

結果とこれから

新たに小さなアイス工場を整備し、受け継いだレシピをもとに試行錯誤した末に、仙六屋がつくる福田屋直伝のクリームモナカが完成した。同時に、単純な継承を超えて、その価値を現代に合わせて進化させるべく、福田屋直伝のアイスを使用したクリームソーダなどのフロート(CREAMS)の開発や、付加価値の訴求可能なギフト展開などの準備を進めている。プロジェクトの大小にかかわらず、街にとって大切な価値を持続させるために、事業を再構築して発展させていく予定だ。結果として、エリアの人々の溢れるほどの記憶や想いが詰まった商品を次の世代につなげられるよう、責任をもって大切に守り、新たな街の価値として育てていきたい。

仙六屋が受け継いだ、福田屋のクリームモナカ

プロジェクト情報
 

プロジェクト名
福田屋のクリームモナカ

実施年月
2019年 – 継続中

担当領域
企画立案、マイクロディベロップメント

クレジット
福田屋(企画協力、技術指導)
善大工業、及川冷機、関鉄工所、地域の町工場の方々(技術協力)
伊藤信平(レシピ開発協力)
upsetters architects(ブランド戦略・企画協力)
Go motion(Movie)